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6.内容等

(1)基調報告

国鉄改革の10年間を振り返り、まず国鉄の分割民営化が基本的に成功であったことを確認したい。莫大な赤字を抱え、経営的にたちゆかなくなった国鉄が、この改革によって息を吹き返した。そのポイントは、?@累積債務を事実上棚上げしたこと ?A地域分割により、より地域に密着した経営が可能になったこと ?B営業黒字が見込めない3島会社(北海道、四国、九州)には3島基金を設けて、経常黒字を期待できる経営環境を整えたこと ?C貨物部門を切り離して全国1社の線路等のインフラ負担を持たない貨物会社を作ったこと ?D株式会社(特殊会社)にすることで、経営の自主性が高まったことなどがあげられる。この結果、JR各社は、改革後、経常黒字を重ね、JR東日本、JR西日本は東証一部上場を果たした。

しかし、改革後10年を迎え、いくつかの問題が出てきた。ひとつは、3島会社の経営悪化問題である。バブル崩壊による金利低下で、3島基金の運用益が低下したためである。もうひとつは、国鉄精算事業団に引き継がれた債務が、土地や株の売却の不調で、増加してしまったことである。さらに、整備新幹線の建設で、将来的なJR各社の経営に負担が増える可能性が高まった点である。

ここで、3島各社に関しては、現行の税優遇策の延長などの何らかの経営支援が必要であること、精算事業団の債務に関しては、利子分だけは、国費で負担して債務の増加を避けること、整備新幹線の建設は、原則として今後は取り止めること、を提言したい。

(2)パネルディスカッション

国鉄が赤字を累積させていった理由は、経営の自主権がなかったことが第一にあげられる。運賃の値上げ幅すら、国会審議のなかで経営問題とは別の次元で圧縮されていた。今回の改革で経営の自主権が大幅に高まったことは、大きな成果である。

今後、より経営の自主性を高めるためには、料金決定システムの改革が不可欠である。ただ、今議論されているプライスキャップ制に関しては、問題が多いと考えている。

運輸行政についても検討する必要がある。そもそも、道路行政と運輸行政が建設省、運輸省と分かれていることが問題である。総合的な交通政策が求められる。

以上のパネルディスカッションの後、フロアからも・精算事業団の債務の利子分を国費負担とする論拠はあるのか・JR各社の設備投資は十分に行われているのかなどの質問が出され、活発な議論の中でシンポジウムは成功裡に終了した。

 

 

 

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